猫ちゃんの消化管型リンパ腫(中〜高悪性度)で長期生存している症例がいますので紹介します。
1週間前から活動性、食欲が低下したために来院しました。
血液検査で貧血と白血球の上昇が認められました。
お腹の超音波検査を確認すると小腸の形が変形しており、腫瘍が疑われました。
この後、抗がん剤を実施しました。抗がん剤がとても効いて1週間での腫瘍は急激に
縮小して活動性や食欲も改善しました。
3cm以上に大きくなっていた腸が半分の1.5cm程まで小さくなりました。
このまま抗がん剤を継続予定でしたが、10日ほどして突然活動性食欲の低下が起こり来院しました。
下がその時の超音波の画像です。
*赤枠は腫瘍の部分です。青枠は腫瘍より胃の方にある小腸です。青枠の中の黒い部分は液体が溜まっています。
腸の腫瘍が小さくなったために腸の内腔が狭窄してしまい腸閉塞を起こしたと考えられました。
オーナー様と相談し手術して狭窄している部分(腫瘍の場所)を切除することになりました。
腫瘍部分で狭窄していたため胃側の内容物が通ることができないため溜まってしまうことで腸の太さが太くなっています。
(青矢印の方が黄矢印より長くなっています)
この後2週間で傷は治ったため再び抗がん剤を開始しました。
3週間ごとの抗がん剤を実施しちょうど1年間行いました。その間明らかな再発は認められませんでした。
リンパ腫は基本的には根治が難しい癌であるため、1年間再発がなかったとしても
抗がん剤をやめると再発する可能性は考えられました。
しかし今回はオーナー様と相談しちょうど1年間抗がん剤を行ったところで抗がん剤を終了し経過観察とすることにしました。
リンパ腫は血液のがんのため基本的には抗がん剤治療がメインの治療になります。また多くの症例が発見されたときには他の臓器にも
転移しているため手術が適応になることはほとんどありません。
今までの経験した消化管型リンパ腫の症例も基本的には抗がん剤が効かなかったり、途中で効きが悪くなってくる子が多く、
数ヶ月で亡くなってしまう子が圧倒的に多いです。
今回は手術を行ったということ、初診時に小腸以外に明らかな病変がなかったこと、抗がん剤が著効してくれたために長期生存してくれたと
考えています。
リンパ腫の場合、手術適応となる症例は数少ないと思いますが、今後も適応と思われる症例がいれば提案していこうと思います。
何か腫瘍でお困りのことがありましたら、ぜひ相談してください。