膀胱結石による尿道閉塞(猫)

今回は膀胱結石による尿道閉塞で手術をした猫ちゃんを紹介します。

膀胱結石による尿道閉塞は犬や猫のオスで多く認められます。

尿道に石が詰まってしまうとほとんどの子で元気食欲がない、トイレに何回も行っているのにおしっこが出ていないなどの症状が出ます。

そのままほかっておくと数日のうちに死亡してしまいます。

今回の症例は半年ぐらい前から膀胱に石があり他院で食事療法をしている子でした。

昨日から何回もトイレに行くが尿が出ていないということでした。

元気や食欲はいつもより少し落ちている程度でした。

触診で明らかに膀胱が張っていました。

*赤枠が膀胱です。ボールのように膨らんでいます。しっかりおしっこが出ている時はここまで膨らむことはありません。

既往歴と症状から膀胱結石の尿道閉塞と考えて尿道からカテーテルを入れて石を膀胱内に押し返す処置をしました。

他院で治療中ということで石を膀胱内に押し返して経過観察となりましたが、翌日再びおしっこが出ないということで来院しました。

療法食によって石が消えることもありますが、2日連続で閉塞しているため手術による石を除去することにしました。

*尿道閉塞している状態でのレントゲン写真です。一般的には石が詰まっている場合、赤枠の部分で白い石が見られるのですがレントゲンでは見られません。

 結石を検査してわかったのですが、「酸性尿酸アンモニウム」という種類の石でした。尿酸系の石はレントゲンで写らないのでこの時も石は詰まって

 いたんですがレントゲンでは何もないように見えていました。

*尿道の石を押し返して超音波で膀胱を確認したところです。赤枠が石です。この石の大きさは3mm程度でした。このぐらいの大きさが一番尿道につまります。

 この症例は全部で2つの石を超音波で確認できました。

*手術で取った石です。超音波で確認した通り2つの石が見つかりました。

今回の石を検査に出したところ「酸性尿酸アンモニウム」という石でした。

猫における「酸性尿酸アンモニウム」のできる原因は、はっきりわかっていません。

ただ今回療法食で尿を酸性にするフードを食べていたため、それが要因になったのかもしれません。

フードを一般食に変更してなるべくふやかしたりして水分を多く取ってもらい尿がなるべく濃くならないように気をつけてもらうことにしました。

手術後は順調におしっこも出ており、一般状態は良好です。

膀胱結石で尿道に詰まってしまった症例の多くは、食事の変更で溶ける石が多いため手術まで行うことは少ないです。

しかし、今回の子は食事で溶けない石だったので治療方法は手術になりました。

膀胱結石による尿道閉塞は珍しい病気ではないですが、命に関わる緊急性の高い状態なので

トイレに行くけどおしっこが出ていないという症状があれば早く来院していただくことをお勧めします。